Oryzias*Life

【オリジアスライフ】東京発。週末はアウトドアで思いっきり遊んで、美味いもんを食す。その備忘録。

晩夏の瀬戸内海、砂浜独占キャンプ、そして海ホタル。(後編)

 
島に降りたつと・・・。
 
誰もいない。店もない。静かな漁村といった感じだ。
いざ、南西側の海岸へめがけて出発だ。
 

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地図で見るとわかるのだが、本来、島の西側へのアクセスは、
豊浦地区から南へ伸びる道で、大浦地区へ向かい、そこから西に向かうという方法だ。
 
自転車ならそういうルートで考えていたが、
もし自転車がなければ、金風呂地区から南下して山を越える細い道があるようなので、それで行こうと思っていた。
 
今回は自転車をあきらめ、金風呂地区から南下していくルートだ。
 
道は思ったより狭く、車は入れない。
そんなところにも、集落があり、家がたくさん立っているわけだから、引っ越しは大変だろうなと思う。
 

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時折、原付やフォークリフトとすれ違う。
通り道にあった床屋のおっちゃんからは、僕らが大荷物を抱え、山を越えていくなど信じられんと笑われ、
さらに追い打ちをかけるように、「この先は土砂崩れで行けないと思うけどなぁ」と。
「迂回すれば、大丈夫だろうけど、はっはっはっ」と素敵な励ましを頂き、俄然、闘志に火が灯る(笑)
 
おじちゃんに別れを告げ、いざ南へ。道は集落を抜けて、山の中の細い道へ。横幅2mにも満たない舗装された道だ。
 
 

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蒸すような暑さの中で、テント、食料、調味料、調理器具、釣り道具、シュノーケル&足ひれ、銛など、衣食住の持ち物に加え、遊び道具満載の重たいザックと、さらに、たくさんのビールと氷を詰め込んだサーモスのソフトクーラーBOXを担ぎながらの登りだから、容赦なく汗が吹き出してくる。
 
しかも、休憩でもしようと立ち止まった瞬間、デカい蚊がたかってくるから、たまったもんじゃない(笑)
 
薄暗い森の中の道で、聞こえるのは虫の声と自分の息遣いだけ。
 
樹々にからみつく植物、もわっとした湿気と緑の匂い、時折みかける巨大なキノコ、
生ける物の力強さを肌で感じる。
 
そんなこんなで登ること、20分くらいで、急な登りは終わり、ゆるやかな道に変わった。
 
森の回廊を抜けると、道も明るくなり、木々の向こうに海が、さらにその先にはたくさんの島々が見える。
 
この景色が見れただけでも、非日常の時間を過ごしている瞬間を体で感じ、嬉しくなってくる。
 
20分ほど進んだところで、途中、下に降りれそうな細い横道を発見。
 
そろそろ目指している海岸あたりだろうと見当をつけ、横道へ進む。
 

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このあたりは完全な山道だ。
顔にはりついたクモの巣を取り払いながら、前へ進む。
 
下にいくにつれて、「ざざーーっ」とゆらめくような優しい波の音が聞こえる。
岩場にあたる「ざぶーん」というような激しい波音ではない。
 
森を抜けると、眼中に広がった広大なビーチ。
 
 
「すげーーーーーーーーーー!!」「うぉ〜〜〜〜〜〜!」
 
みな子供に戻ったかのような思い思いの表現で、この素晴らしい光景に賞賛を送っている。

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完全なるプライベートビーチが広がっていた。
 
重たいザックを置いて、服も靴もぬいで、海に飛び込む僕ら(笑)
 
ひとしきりはしゃいだ後は、クーラーBOXからキンキンに冷えたプレミアムモルツで乾杯だ。

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CMに出てきそうな「ごくっ、ごくっ」という喉を鳴らす音が、波の音に混じる。
 
言葉にならない達成感・・・。
 
今日という日に乾杯だ。
 

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それからテントを設営した後は、磯場をつたえ歩き、島冒険をしたり、
銛をもって、海で泳いだり、釣りしたり、流木集めたり。
 
各々が自由に、ゆったりした島時間を満喫している。
 
ただ、海に潜って思ったのは、魚がとても少なかった。
 
砂地エリアで見かけたのは、1匹のメゴチと1群のボラのみ。
岩場エリアはカラフルなキュウセン、クサフグばかり。
 
毎年、泳いでいる伊豆あたりに比べると、数も少なかった。
 
異常気象のせいだろうか・・・。
水温が異常に温かい。
 
本当はキスの天ぷらでもやりたかったが、砂地での投げ釣りをあきらめ、
小さな堤防からイカ狙いのエギング、オキアミを餌にした五目釣りを試みるが、釣れたのはクサフグ1匹のみ。
 
完全に食料調達失敗。こんなはずじゃなかったのに・・・(笑)
(昨年も、一昨年も魚パーティーしたのに・・・)
 

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夕方。
キャンプ地の砂浜に戻り夕飯の支度開始。
 
集めた流木で焚き火をし、
ご飯を炊いて、汁物をつくる。
汁物には、磯場で採取したカメノテ
カメノテは見た目のグロテスクさからは想像できない、ピンク色の身をもっており、意外と美味い。
 
おかずの種類は少なかったが、満足の夕飯だった。
 
外で食べる、ただそれだけだが、それがいいのだ。
何を食べるかよりも、誰と食べるか、どこで食べるかのほうが、却って心に残ることが多い。
 

食後、最後の悪あがきと、目の前の海岸から釣りをしてみるものの、

フグの猛攻にあい、瞬時にエサがなくなるの繰り返しで、すぐに断念。
 
 
その後は焚き火の周りで、お酒を飲みながら、まったりとした時間を味わう。
 
なまぬるい潮風が心地よい。
 
昨晩はずっと車移動で、皆あまり睡眠も取れなかったせいか、焚き火の周りでうつら、うつらしている。
 
 
ぼんやり、頭上の半月を眺める。
 
台風が近づいているせいか、雲の動きが速い。
 
 
ふと、その時、視界の端っこにある海が青く光ったような気がした。
 
けど、そちらを見るが、真っ黒い海が広がるばかり。
 
気のせいかと思い、視線を焚き火に戻そうとした時、海辺のある一ヶ所がぼわーっと青白く光った。
 
「んんっ??」
 
 
海ホタルだ。
 
高校の頃、生物の授業で海ホタルを見たことがあるから、すぐにわかった。
陸にいるホタルの光は黄色だが、海ホタルの光は青白い。
 
すくっと立ち上がり、5m先の海辺で目を凝らすと、
打ち寄せる波の中で、時折、小さく青白く光るのが見える。
 
手で掬ってみると、やはり海ホタル。
ミジンコのような形で、大きさは2mmほどだろうか。
 
「海ホタルだよ」と、眠りこけている2人に声をかけると、
2人とも心無しか嬉しそうだ。
 
海辺で足をつかってバシャバシャやっていると、その部分だけ青白い閃光が煌めく。
 
みな、声にならない声を発し、やたらテンション高い(笑)
 
だんだん気持ちが昂ってきて、3人とも着ていた服を脱いで、海に飛び込む。
 
月夜の下で入る海は格別だと思う。
これは体験した者にしかわからない感覚だろうと思う。
裸足で捉える砂も、なんとも優しい感触。
 
 
海の中で手足を動かすと、その部分が帯状に青白く光る。
やがて、その数は徐々に増えてきて、水中メガネをつけて、海に潜ると、
海の中には宇宙が広がっていた。
 
あれは、本当に宇宙空間だった。
海の中に広がる、無数の星の煌めきは、夢のようだった。
 
遥か遠い昔に見たことがあるような、心がざわつく既視感。
 
まるで、青白いオーラを発しているかのように、
たくさんの光が僕の体を包んだ。
 
海ホタルだけではない、波全体が青白く光っている。
 
夜光虫だ。
 
信じられない、海ホタルと夜光虫の競演だ。
 
 
人工的な光が遮断されたこの島の一角で、
月光が照らす海の中で、特別な体験をしていることに、
言葉にならない深い感動を覚えた。
 
海の中で泳ぎながら思った。
今日、見た景色は一生忘れないだろうって。
 

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こんな貴重な体験が出来たことに、感謝した。
 
海からあがり、焚き火で暖まり、僕らはそれぞれのテントで眠りについた。
 
 
翌朝、台風の影響で、海の表情は一変していた。
なぐりつける暴風雨で、テントはバタバタと音をたて、タープは何度立て直しても倒れてしまう。
台風による船が欠航の恐れがあったので、撤収を決め、僕らは早々に島を後にした。
 
島で2泊の予定が、1泊になったことは残念だったが、すべての出来事には意味がある。
 
この後、東京に帰れば良かったものの、思わぬ出来心から、瀬戸大橋を渡り、香川でうどんを食べたり、淡路島に泊まったことで、台風に巻き込まれ新たなドラマが生まれたりと、とても心に残る島キャンだった。
 
 
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